「SENDAI光のページェント」をはじめ2024年の宮城県内では春以降、毎月のように大規模イベントが行われました。多くの人でにぎわいましたが、そこには今年ならではの背景がありました。
5月に行われた「仙台・青葉まつり」。新緑の下、威勢の良い掛け声とお囃子が街中に響きわたり、初夏の仙台を彩りました。
今年は、沿道のお客さんも飛び入りで参加できる「総踊り」が5年ぶりに復活。会場は熱気に包まれました。2日間で93万3千人が訪れ、過去最多となったコロナ禍前の97万人に迫る人出となりました。
6月の「東北絆まつり」にも多くの人が訪れました。東日本大震災からの復興を願い2011年にはじまった「東北六魂祭」の後継イベントで、仙台市での開催は7年ぶり。東北6県のまつりが仙台に集結し、過去最多となる57万2千人が訪れました。
地域経済に詳しい七十七リサーチ&コンサルティング首席エコノミストの田口庸友さんは、今年のイベントに人が集まった要因を「コロナ禍が明けて2年目ということで、大規模な集客イベントへの参加に対して抵抗感が薄れてきた、楽しもうという気運も高いことが言えると思う。今年は長引く物価高もあって、節約はしたいが楽しみたいというのが一方にあるので、これまで海外や遠方に行っていた旅行の需要が近場に移った」と分析します。
多くの人が訪れれば、経済波及効果も。仙台市によりますと、東北絆まつりの県内への経済波及効果は63億2600万円と過去最多になりました。
今年はじめて仙台市内で開催された「ポケモンGOフェスト」。世界で10億回以上のダウンロード数を誇る人気スマホゲーム「ポケモンGO」のリアルイベントです。
茨城県から来た親子
「最高です」「ポケモンGOのイベント、初めてなのでまさかここまでいるとは思わなかったので、迷子にならないように気を付けます」
アメリカから来た人
「(仙台は)今まで訪れた所の中で最も美しいまちの一つ。本当に美しい」
期間中、約37万9千人が市内でゲームを楽しみ、街の至るところに人があふれました。訪れた人の9割が仙台市以外からと集客効果は抜群。海外から来た人もいました。イベント期間中、食べ歩きグルメを販売する店では商品が完売したり、仙台駅近くのホテルは全ての部屋が予約で埋まったりと、街は活気づきました。ゲームに熱中するあまり、「歩きスマホ」をする人が続出し問題になりましたが、運営する企業によると、経済効果はトータル74億円。買い物などが28億円、飲食が20億円、宿泊が6億7千万円と多くの消費を生み出しました。
大きな経済効果がある一方で、開催にあたって苦悩するイベントも。
高橋咲良アナウンサー
「仙台の冬の風物詩『SENDAI光のページェント』が始まりました。ただ今年は資金難ということで点灯区間が短くなっています。そのため、あちらのケヤキには灯りがついておらず、暗くなっています」
今年の点灯区間は、国分町通りから西公園通りまでの450メートル。去年よりも150メートル短く、例年の3分の2程度の規模です。今年は仙台市役所の建て替えに伴い、勾当台公園市民広場が使えないため協賛金が減り、資金が不足しました。これを補おうと実行委員会はクラウドファンディングを行ないましたが、目標額に届かず、規模縮小を余儀なくされました。
田口さんは、さまざまなものの値上がりによる運営コストの上昇で、多くのイベントが苦しい状況に置かれているといいます。
七十七リサーチ&コンサルティング首席エコノミスト 田口庸友さん
「とにかく原材料などが上がっているということがあって、会場の設営費や警備スタッフを集める警備費も上がっている。時期によっては暑さ寒さ対策のためのエネルギー価格も上がっているということです。これがもう限界に来ているということで、負担しきれなくなってきて、縮小したり中止したりといったものが相次いでいる」
こうした状況をうけて多くのイベントが取り組んでいるのが「サービスの有料化」です。
「仙台・青葉まつり」では、定禅寺通りに座ってまつりを楽しめる有料桟敷席を19年ぶりに設けました。「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」では、ストリートピアノを設置する費用などとして、クラウドファンディングをはじめて実施。返礼品として、オリジナルTシャツやコンサートチケットを用意したところ、好評を得て目標額以上の金額が集まりました。
七十七リサーチ&コンサルティング首席エコノミスト 田口庸友さん
「稼ぐ祭りにすることによって、伝統を維持していく稼げる祭りの仕組みを作ることが大事だと思います。(お金を)出した分に見合ったサービスの提供が、主催者側に求められる知恵と工夫だと思いますし、伝統を守りながら進化していけるということだと思います」
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